昨年は父に介護が必要になり、いろいろなことに追われていた。介護が必要な状態になると、いろいろとやらなくてはいけないことが発生する。初めてのことが立て続けに発生し、先行きが不安になる暇もなくあれこれと対応していかなくてはならない。

実際に最初の1ヶ月は気が休まらなかった。そこで、少しでもこの体験を共有して同じような状態に陥った方の助けになればと思う。ただし、ぼく自身は専門家ではないので、そのことはあらかじめ断っておく。

突然に始まる介護

介護は突然始まる。そこからさまざまなことが怒涛のごとく押し寄せてくる。対応に次ぐ対応。ひとつのアクションがすぐに次のアクションにつながり、落ち着く暇もなく対応に追われる。介護ってこんなに大変だったんだなと。

動きの悪い状態ではあったが、動けていたし歩けてもいた。それが今日、突然に動かなくなる。人っていきなり歩けなくなるんだなということを思い知らされた。

そうなったときに、どうすればいいのか。それまで何ができるのかを紹介したい。

日常の変化を記録しておく

これは介護が始まる前段階で、ちょっと心配だなと思ったら始めるといい。たとえば、何月何日何時何分ごろに転倒したとか尻餅をついたとか。毎日お風呂に入っていた人が数日間隔とか、1週間に1度になったとか。1日おきに洗濯していたが、2週間は洗濯物が放置されていたとか。

ちょっとした変化を記録しておくことで、それが参考情報になり、あとあとで活用できるようになる。また、知識がある人なら、そういった日常の変化から、もしかしたら認知症の兆候があるのではなんて気づけるかもしれない。

最初のアクションは地域包括支援センターに行く

まず、やばいなと思ったら地域包括支援センターに行くところから始まる。地域包括支援センターは高齢者の介護に関する相談を一手に引き受けてくれているところだ。自治体のウェブサイトを調べれればどこにあるかが掲載されているので、そこに相談に行くのだ。

その際に相談したいことや対象者の状態などを書いた文書を用意しておいたほうがいいだろう。口頭で説明することも可能だけども、介護で相談に行くという状態で心に余裕がないので、すべてを説明しきることはできないだろう。とういうか、ちゃんと説明しきる自信がなかったのであらかじめ文書を作成してからいった。

そのときに活躍したのが、上で紹介したちょっとした日常の変化の記録。これをまとめるだけでも、どういう状況におかれているかを説明できるし、これを何部か印刷して渡すだけで、職員間で情報共有してくれて早い対応につながる。

実際に朝一で市役所に行って相談し、10時ぐらいには職員が車椅子を持って自宅に来てくれて対応してくれた。だから、相談内容と状態をまとめたものを相談に行く前日にでも準備しておくといいと思う。

以下は実際に使ったものの個人情報を少し削ったりしたものなので、テンプレートとして活用してもらえればと思う。マークダウン形式で書いているので、対応しているエディターに貼ればちゃんとした書式になってくれる。

# 介護の相談

## 家族の希望
* 介護施設への入居。
    * 要介護認定を受け、介護施設への入居を希望。
* 要介護、認知症の認定などの手続きで病院等への移動が必要な場合の支援。
    * 〜
## 直近の状態
* 20xx年x月x日から部屋から出ない状態。
    * 座っている状態からほとんど動かず。
    * 〜

## 状態変化
* 20xx年x月に入ってから〜
* 20xx年x月の終わり頃に〜
* 20xx年x月x日深夜1時ごろ、〜

## 本人の態度
* 手伝いを申し出ても「大丈夫」と断ることが多い。
* 〜

## 持病と病歴
* 高血圧
* 肺癌(左肺)
    * 20xx年x月x日に初診断で腫瘍あり。
    * 20xx年x月x日に肺癌と判明。このときにタバコをやめる。
    * 20xx年x月x日に手術。左上葉を摘出。
* 〜

## 転倒の記録
* 20xx年x月x日、夜中にベッドから転倒。
* 20xx年x月x日 xx時xx分、〜

なお、この文書は地域包括支援センターへの相談だけでなく、病院や介護施設、ケアマネジャーへの説明のときにも使える資料となる。だから、体の状態や病歴などはできる限り細かく記しておきたい。ぼくは日時もわかる範囲で細かく記した。

病院に行って診断

何はともあれ、病院に行く必要がある。そこで診断をしてもらうのだ。診断がなければ何も始まらない。というのは、介護保険の審査の段階で主治医の所見が必要だからだ。

職員の方が持参してくれた車椅子で近くの病院に連れていき、認知症の診断を受けた。

要介護認定の申込

ぼくの地域の相談窓口が市役所だったためか、病院から帰宅後に状況を連絡すると、職員の方がすぐに要介護認定の申込用紙や介護施設の案内を持ってきてくれた。

要介護認定は申し込んでから少なくとも1ヶ月はかかる。まず、介護認定員がきていろいろと質問をしていく。このときの質問は公平性のため全国で一律に決まっているそうだ。さらには役所側から主治医に所見を求められる。それをコンピューターによる一次判定を行い、最終的には介護認定審査会で判定を行なって決定されるそうだ。

まずこれを申し込まないと始まらない。

介護認定は申込日まで遡って適用されるため、介護認定申請中でも介護サービスを受けることができる。また、介護認定は初めての場合は有効期限が6ヶ月という情報が多くみられたが、父の場合は1年間だったので、状況によって異なるのかもしれない。

ケアマネージャーと契約

相談したその日のうちにケアマネージャーを紹介され、翌日にはケアマネージャーが訪問して契約書を交わした。ケアマネージャーは介護に関するケアプランを作成してくれる人で、契約書を交わすといっても利用者が直接料金を支払う必要はなく、国からケアマネージャーに支払われる。

あとはケアマネージャーと相談しながら今後のことを決めていくことになる。

まず介護ベッドを入れつつ、仕事で開けることがあることもあり、ショートステイ先を紹介してもらった。父が動けなくなってから、3日ほどで介護施設に移送されることになった。介護ベッドの使用は実質は1日だったけど、電動リクライニングがついているので、少しは楽をさせることができたと思う。

入居先探し

これが難航した。

まず、介護施設には大雑把に大別すると介護付きとなしがある。介護がないところはサービス付き高齢者住宅や住宅型老人ホームなどだ。施設によって入居の条件が異なったり、ついているサービスの違いがあるが、いずれにしても必要な介護サービスをオプションでつけなくてはいけなかったりする。

介護付きは介護型老人ホームや公共の特別養護老人ホームなどで、介護まで全部付いている。中でも有料老人ホームは病院への通院の介助も行ってくれたりするところもあり、まさに全部入り。もちろん、その分、値段には反映される。

まず絶対に介護が必要なこと、病院への通院のたびに仕事を休むわけにはいかないことから、通院介助付きの有料老人ホームを探すことにした。住んでいる市とその近隣には介護型有料老人ホームが4か所があり、うち1か所は入居金が1,000万円越え。うち1か所がGoogleで検索すると、まあ出てくるわ出てくるわ悪いニュースが。実質、近隣では2択となった。

そのうちひとつが面談後に父の持病を理由に断られた。面談後にすぐ入居健診という健康診断を病院に受けに行っている最終に連絡が来て受け入れができないと。病院で急遽、検診を中止して帰ってきた。

結局、最後に残った隣の市にある施設に受け入れてもらうことになった。

とにかく情報を収集して、実際に施設に行ってみて、もし可能なら見学をさせてもらい、申し込みをする。入居検診の際は、ショートステイ先の施設は対応してくれないので、ケアマネージャーに相談して介護タクシーを紹介してもらい、付き添いで病院に行く。その間、持病での通院も同じように対応してもらった。その度に仕事を休む必要がある。

こういう情報はネットだけだと限界がある。あまり詳細に公開されていないことが多いからだ。だから、実際に訪問してみて初めてわかることも多い。職員の態度だったり、施設がちゃんと整備されているかは実際に見たほうがいいだろう。

施設探しは介護認定が降りるまでの1ヶ月間に決定できるとベストだけど、うちは2ヶ月かかった。

職場には事情を話しておく

これ大事。職場には家族が介護の必要が出て対応していると言っておく。仕事の面で協力してもらえるし、何よりも有給休暇を乱発することになるので、あらかじめ伝えておく。

会社によっては介護休暇制度があるところもあるが、これも会社によると思うけど、基本的には有給休暇とは異なり、介護休暇は純粋に休暇なので給与が発生しない休みだ。だから、有給休暇から消化していくことになる。もし、会社に有利な介護制度があるなら積極的に利用できないかを検討したほうがいいだろう。

おわりに

自分の介護の体験を記事にしようと思ったきっかけは、近所の人が、家族に認知症の兆候が出てきて、介護の相談を受けたからだ。父が介護状態になったことは伝えていたので、それで相談してきたのだと思う。誰しもが経験する可能性の高いもので、誰しもが初めての体験となるので、やはり先人の知恵や経験はためになる。自分の体験が少しでも参考になればと思って記事にした。

とにかく足を使わないといけなかったのは大変だった。夏の暑い炎天下の中、駅から離れた介護施設まで歩くのは辛かったし、事務手続きなどの受付は基本的に平日なので仕事を休んで行かなくてはいけなかった。駅からかなり離れている施設もあり、往復するたびに利用するタクシー代がバカにならない。

あと、気になったこととして、介護業界はいまだにFAXが主流なんだなと感じた。いろいろな書類のやり取りをする中で、当たり前のように「FAXで送ってください」と言われることが多かった。FAX当然使ってるよねって感じだった。メールでも大丈夫なことを確認できたところは書類をスキャンしたものをメールで送ったけど、どうしてもFAXでなければいけないところはコンビニでFAXを送った。

介護の相談を始めていろいろ動き出して大変だったけど、父が介護施設に向かったあとは心が落ち着いた。それまでは気が休まることがなく、食欲もなくなるぐらい不安な状態が続いた。病院で先生も言っていたけど、自分の生活を大切にしないといけない。共倒れが一番ダメなので、仕事を辞めるなんて選択肢が最もダメなのだ。

実際に当事者になってみると自分一人では何もできないことを思い知らさせる。介護業界は人手不足と言われているけど、やっぱり専門家に頼んだほうが介護される側もしてもらう側も幸せだと思うのだ。

関連投稿

Trending

%d人のブロガーが「いいね」をつけました。