Ginza Sony Parkで歴代のウォークマンが展示されるイベント「#009 WALKMAN IN THE PARK」が行われている。ウォークマン40周年の記念イベントで、1979年から現在までのウォークマンが集められている。開催は2019年7月1日~2019年9月1日まで。Tシャツなどのアイテムも販売されている。

Ginza Sony Parkにいくとまず目に入るのが巨大なウォークマンのオブジェだ。

Ginza Sony Parkのウォークマンのオブジェ

オブジェは「WM-F5」というスポーツモデルのウォークマン。

このモデルは持っていなかったけど、この時代のメディアはカセットテープ。いまの20代以下はカセットテープと聞いてもピンとこないかもしれないけど、簡単に説明するなら音楽用の磁気テープである。何種類かのグレードがあったりして、少しでも音がよくなるように、ちょっと高いけどメタルテープを買って録音したりしたものだ。

録音はテープからテープ、ラジオからテープ、CDからテープという感じでCDラジカセやミニコンポから録音する。録音したテープは友達とやり取りして、お互いに好きな曲を紹介しあったり、いろいろなCDから好きな曲を集めて自分だけのベスト盤を作ったりした(いまの言葉だと「プレイリスト」だね)。

デジタルの音楽が当たり前のいまと比べれば、それはもう音は悪かった。アナログだし磁気テープだからノイズはのるし劣化した。録音だって、いまなら一瞬でコピーで終わるかもしれないけど、当時は再生している音を録音するしかなかった。高機能のカセットデッキには、録音のために倍速機能とかもあったけど、普通は再生時間と同じだけの時間をかけて録音する。つまり、60分のアルバムを全部録音する場合、同じ60分かかるということだ。

やがてMDが発表されてからカセットテープから置き換わる。これまでカセットテープでやっていたことをMDでできるようになった。光ディスクなので磁気テープよりも劣化しづらい。デジタルになることで、一瞬で頭出しができるようになった。

カセットテープの場合、曲の先頭から聞くために巻き戻したり、次の曲に移るときに早送りしたりする必要があった。高機能コンポの場合、無音区間を検知して自動で頭出しするという機能もあったけど、曲の途中に無音がある場合は使えなかった。

MDならデジタルなので、どの部分が曲の頭なのかが記録されており、すぐに曲の頭に戻ったり、次の曲に移ることができるようになった。いまではあたりまえだけど、当時は画期的だった。もちろん、CDではすでに同じことができていたのだけど、自分で録音できるメディアで頭出しができるようになったことで、先に述べた友人との曲の共有や自分だけのプレイリスト作りにさらに夢中になった。

やがて時代はパソコンから音楽をウォークマンに取り込む時代になる。メモリースティックが登場してメモリースティックウォークマンが出てきたり、いまでは当たり前な本体に直接音楽を保存するネットワークウォークマンが出てきたりした。

ここでソニーが失敗したのが、音楽ファイルの規格を独自形式にしてしまったことだろう。このころ、世の中は音楽ファイルといえばMP3だった。パソコンで曲を聴く場合、CDからMP3にしてから、MP3プレーヤーで音楽を聴く。そこに独自形式 ATRAC3に走ったものだから、あとからきたiPodに追い越された(MP3ファイルは「OpenMG Jukebox」なるソフトでATRAC3に変換する必要があった)。もっとも、ソニーはレコード屋の側面もあったので、Appleのようにさまざまなレコード会社を巻き込んで曲をオンラインで買えるようにするという発想はなかったのだろう。

ぼくがウォークマンから離れたのもこの頃だ。しばらくは携帯電話(ケータイ、いわゆるガラケー)に音楽を入れて聴くことになり、それからスマートフォンに移る。最初に手にしたスマートフォンはAndroidなので、ファイルをそのままAndroidに転送したが、iPhoneに乗り換えてからすべてiTunesで管理するようになった。

いまでは、iPhoneがある以上、再生のためだけに専用機を買うモチベーションがないためウォークマンからは離れたままだけど、自分の青春時代、音楽が最も楽しいと感じる年代にウォークマンに触れられたことはよかったと思っている。

余談だが、ソニーといえば、イヤフォンMDR-EX90SLはカナル型でありながら開放感のある音が聴けて、いまでも名作だと思っている。壊れなければ使っていたと思う。

ちなみに、いま手元でソニーでお世話になっているものといえば、アクティブスピーカー「h.ear go(SRS-HG1)」だ。すでに生産完了品で後継機種が出ている。

WALKMAN IN THE PARK (Ginza Sony Park)

先の「WM-F5」オブジェの先に、下に降りる階段があり、「WALKMAN IN THE PARK」の文字がある。

階段を降りるとさまざまなアーティストが選んだ楽曲が、アーティストが当時聴いていたウォークマンで楽しめるという展示がある。

WALKMAN IN THE PARK (Ginza Sony Park)

さらに下の階に降りていき、カフェが併設されている階に辿り着くと、壁一面に歴代のウォークマンが展示されている。

WALKMAN IN THE PARK (Ginza Sony Park)歴代のウォークマン

壁一面のウォークマンは、公式サイトによると「約230台」とのこと(なんで「約」なんだよ。並べるときにちゃんと数えとけよ)。カセットテープ、MD、メモリースティック、ネットワークなど、様々なウォークマンが並んでいて、見ていると思わず「懐かしい」と声が出てしまう。

たとえ持っていなかったとしても、CMで見たとか、友達が持っていたとか、何かしらの接点はあるだろう。

WALKMAN IN THE PARK (Ginza Sony Park) MZ-R50

ウォークマンの中で一番使い倒したモデル。色も自分が持っていたものと同じ色のものが展示されていて、ちょっとうれしかった。この頃のソニーのプロダクトって、質感がよかった。ジョグダイヤルを駆使しながらMDに曲名を入力していったのは懐かしい。クルクルピッピだよ! この頃、携帯電話もソニーのクルクルピッピを使ってたよ。

WALKMAN IN THE PARK (Ginza Sony Park) MD

MDのメディア。カセットテープよりも小さくなって、取り回しが便利になった。

WALKMAN IN THE PARK (Ginza Sony Park) NW-E3

ネットワークウォークマン。持っていたのは「NW-E3」というモデルで、写真でいうと左上のオレンジ色に見えるもの(実際は赤だった気がする)と同じやつで色はシルバー。赤と青は発売日があとだった記憶がある。実は「SONY」のロゴはプリントではなく、ちゃんと加工された金属が出っ張っていた。本当、このころのソニーは質感はよかったと思う。

なお、右上のシルバーは違うバージョンでたぶん「NW-E5」という、ぼくが持っていた「NW-E3」の後継モデル。

パソコンにソニー謹製「OpenMG Jukebox」をインストールして、ファイルをATRAC3に変換してから転送する。UIがWindowsのデザインを無視した華美な感じのもので、見た目が変更できる作りになっている。やたら重かった記憶しかない。

WALKMAN IN THE PARK (Ginza Sony Park) 捜索中のウォークマン

レアモデルを持っている人はハッシュタグをつけて投稿するよう呼び掛けている。メーカーで保存されていないのだろうか。

30代以降なら懐かしさを覚えるだろうし、20代、10代でも当時の再生機の音を体験できる貴重なイベントだと思う。デジタル音楽に慣れたいまの世代の人たちが、カセットテープの音をどう評価するかは興味があるものだ。

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